なぜ人生が暗いのか

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自分が最も満足すべき生き方というのは、どんな生き方なのだろうかという、いわば人間の生き甲斐を求めるというのが求道です。こういうことに気付く年代というのは、人によって大きく個人差があります。人によっては、中学生のころから気付き始める人もいます。しかし、だいたい一般的に統計をとってみますと、三十五歳というのが一番多いですね。三十代の半ばです。

『戦争と平和』という有名なトルストイの小説に、主人公が三十五歳の時、父親に向かって「人生が暗くてしょうがないんだ。」と訴えると、父親が「バカ、男が三十五歳になって、人生暗くないなんてことがあるか!」という場面があります。

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これらの人が最初に感じるのは、自分の人生に対する、意識の虚しさということです。それまでずっと追い求めて来たお金、地位、あるいは女であるかもしれないけれども、いろいろなことを物質界において求めてきた。それに不思議な一種の虚しさを覚えるというのがきっかけです。

この時この人が求めてきたものは、すべて外の世界へ向かって追い求めていたものであるということがわかります。外の世界というのは、自分の五感的知覚を伴った世界です。おいしい、まずいとか、目で見て汚いとか美しいとか、耳で聞いていい音だ、悪い音だというふうに、五感的知覚の意識の流れがある世界を、外の世界というのです。そういう意識状態において、外に向け求める。

次に心は、内側の世界へと向かっていくんですね、つまり自分の心の中に。そして求めるものは、常に外にあります。ところがそれはまた、常に変化して止まないのです。諸行無常という言葉で、お釈迦様が言った通りですね。常なるものはない、すべて変化し続けている。

そこで内に、何か不動なるものを確立しない限り、その求めるものを得る、求めたものから得られた喜びというのは、あたかも泡沫のものにすぎないということに、この人は気付き始めます。内側に何かを確立しなくてはならない、不動なものにしなくてはならない。

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